酒粕で発酵が進む仕組み
発酵のメカニズム
酒粕の材料となるのはお米と麹菌です。お米に麹菌を付着させ、適切な温度下において菌の活動を促進します。発酵とは、微生物が活動した結果、人間に有益な成分を生み出す過程、作業のことを指します。
これをしっかりと発酵させることで、麹菌がお米のデンプンを糖に変えていきます。これにより糖がたくさん生成されるのですが、これが酵母の栄養となり、糖がアルコールへと変えられていきます。
酒粕や糀を水に漬けて放っておくとアルコール臭がするのは、この菌と酵母の連携作用によります。酵母が糖をアルコールに変えるのは、並行複発酵と呼ばれ、菌や微生物の複雑な働きや化学反応が合わさって出来上がるのが酒粕や糀です。
麹菌と酵母の作用
お米と麹菌が発酵した場合、アルコール分は実に20パーセントを超えるほどにもなります。そのため、酒粕にもアルコール分が残っています。
酒粕はお酒を造る諸味から、水分を搾り取った残りかすなのですが、やはりそこにもまだアルコール分が5~8パーセントほど残っています。
そして生きた酵母や麹菌も残っているため、酒粕単体で放っておいても発酵は進んでいきます。酒粕はアルコール分により静菌作用があるため、純粋で品質の高い酒粕は腐らないとさえ言われます。
その保存効果を生かして寝かせることで、発酵が進んで酒粕の熟成が始まります。熟成の進んだ酒粕は、色がピンクや黄色に変わり、柔らかさが増して風味も変化します。
スーパーに売られている板粕などは、糖類や添加物が入っている可能性がありますが、酒蔵で買うようなこだわりの酒粕であれば、長期熟成を自宅で行うことも可能です。冷凍にすることで発酵もほぼ停止するため、さらなる長期保存には冷凍が適しています。
生み出す違い
甘酒を例にとると、酒粕からでも糀からでも作ることが可能です。酒粕を使用するレシピは簡単なものの、すでに発酵した酒粕を使用するため、より甘味があり風味も異なります。
これに対し、糀を使用した甘酒はより自然で、フレッシュな発酵の風味を楽しめる魅力があります。もちろん、糀から作る甘酒の方が手間も時間もかかります。ほぐした米麹に水を加え、55~60度で3~4時間発酵させます。
もっと発酵させるレシピもありますが、アルコール分の好みで調節しましょう。この方法で作った甘酒は、糖分を自然に生み出した状態で飲むため、甘さが自然で、しつこくない爽やかな甘酒に仕上がります。
より濃いのは酒粕を使用した甘酒ですが、こういった違いを味わうのも醍醐味の一つでしょう。

